平成27年6月15日に「税で日本はよみがえる」(森信 茂樹著)を題材に社内研修を行いました。

 

本書のテーマは「税制を変えることで、経済や社会をよみがえらせることが出来る。」である。

所得課税・消費課税・資産課税、社会保障制度などの税理論を学び、メリット・デメリットについて比較検討し、我が国の状況に則した税制を考えていく。この考え方をタックスミックスという。

著者は、このタックスミックスの考え方のもと、わが国の現況の課題や未来の展望に沿った税制・社会保障制度を、他国から学び、また、新たな税制を導入することにより、税制の構築による経済成長、ひいては国づくりを提唱する。

 

しかし、タックスミックスと一言でいっても、容易ではない。

本書より例を挙げるならば、今、所得格差と資産格差を論じた書物と論文が世界的に大きな注目を集めている。フランスの経済学者トマス・ピケティ氏『21世紀の資本』と米国のローレンス・サマーズ元財務長官が公表した論文『先進諸国の長期停滞論』である。

ピケティとサマーズはそれぞれの視点から、所得の再分配政策が重要であると主張している。

富裕層に富が集中すると消費が伸びなくなると説いたのがサマーズである。

富裕層は生活に必要なお金は、資産のうちわずかに過ぎず、残りは金融資産に再投資されることになる。つまり、消費性向の低い富裕層に所得や富が集中すれば、社会全体の消費が停滞し、需要不足になるという事である。

ピケティは、所得格差より、富を再生産し格差拡大につながる資産格差の方が問題だとして資産課税の強化を説いている。

ところが、わが国では、逆進的な負担構造である社会保険料に加えて、賦課制度の年金制度のもとで、勤労世帯から高齢世帯への所得移転が多く行われている。わかりやすく言えば、「国民年金に加入している非正規雇用の勤労者から裕福な高齢層へ」と所得再分配が行われている。

年金問題を解決するために、格差問題を助長しているという構図となっている。

また、勤労世帯には税制がそれなりに機能して格差の是正が図れるが、高齢世帯になると所得再分配機能が弱くなることがうかがえる。たとえば、勤労所得のある年金受給者は、給与所得控除と公的年金等控除の二つの控除が適用され、税負担が少なくなるという具合である。

税制改革は、適度なバランスで総合的に見直さなければ、1つの問題を解決したとしても、また新たな問題を生み出すことになりかねない、ということだ。

 

本書を読むと、税制改革がいかなる目的をもって行われ、あるいは、行われようとしているかがよく分かる。

その目的や、改革による影響により、企業が、ある日突然航路を変えざるを得ない状況に陥る前に、その動向を逐次追いかけ、どのような波が押し寄せるだろうか想像し、自らをイノベーションする力が必要だ。

 

(萩内)